Autumnal

感謝祭の終わり


 

 

俺は言われた通り、オータムナルさまの寝所に出向いた。

 

 

オータムナルさまは俺と同様さっきの民族衣装から着替えて、ワイシャツとスーツパンツと言うラフな格好だ。

 

 

ワイシャツは腕の半分まで捲ってあって、褐色の腕には白い包帯が巻かれている。

 

 

「紅、体はもう大丈夫か?」

 

 

そう聞かれて俺はこくりと頷いた。

 

 

「オータムナルさまこそ……大丈夫ですか…?俺なんかを庇って…」

 

 

オータムナルさまの包帯の巻かれた場所までそっと手を差し伸べると、ぎゅっと彼の手が俺の手を握り返してきた。

 

 

「大したことはない。お前が無事なら怪我の一つや二つ…

 

 

腕の一本も惜しくない」

 

 

「そんなこと!」

 

 

冗談にしてはブラック過ぎる。

 

 

思わずオータムナルさまの腕をぎゅっと握ると

 

 

「Ouch!」オータムナルさまは声を挙げ、俺は慌てて手を離した。

 

 

「すみませ……!」

 

 

「冗談だ。私が悪かった」

 

 

オータムナルさまはそっと俺の頬に手を伸ばすと、俺の頬を優しく包んでくれた。

 

 

俺はその手をそっと包み返した。

 

 

「腕が無くなったら、お前をこうして包むことも抱きしめることもできない」

 

 

表情を和らげて、優しい微笑を浮かべながらオータムナルさまは俺の感触を確かめるように手を上下させる。

 

 

「オータムナルさま……本当に……本当にご無事で何よりです」

 

 

俺が目を上げると、オータムナルさまの優しい色合いの瞳が揺らいだ。

 

 

「それはこっちの台詞だ」

 

 

ドォン……

 

 

遠くで鼓動のような大きな音が鳴り響いた。

 

 

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何となく顔を上げると、開け放たれた窓の向こう側、バルコニーの上に色鮮やかな花火が打ちあがった。

 

 

それは瑠璃色の空に咲きほこるまるいまぁるい大輪の華。

 

 

俺は目を開いた。

 

 

「花火……?」

 

 

「ああ、美しいだろう?祭りの終わりを告げる花火だ。日本でもあのような形をしておるのか」

 

 

そう聞かれて俺は頷いた。

 

 

花火なんて―――ここ何年も見てなかった。

 

 

 

 

 

「美しいな…

 

 

お前と見る花火は―――実に美しい」

 

 

 

 

オータムナルさまはどこかうっとりと恍惚のまなざしで空に輝く大きな大きな花火を見上げる。

 

 

俺は―――……今世界一の幸せ者だ。

 

 

好きな人と一緒に美しい花火を見られて。それは俺がまだ恋を知らなかったときに漠然と描いていた恋愛予想図の一つに組み込まれていた。

 

 

それがようやく叶ったのだ。

 

 

美しい花火。

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

オータムナルさまの方がずっと

 

 

ずっと

 

 

 

 

 

美しい。

 

 

 

 

 

それは儚く散ってしまう花火とは違い、日を増すごとに年齢を重ねるごとに増す美しさというものだ。

 

 

昨日より今日、今日より明日。明日より―――

 

 

彼の輝きが増すのは、きっと俺の中に眠る恋心が日に日に大きく育っていくからだろう。

 

 

もう

 

 

 

隠すことはできない。

 

 

はっきりと言おう。

 

 

 

 

 

「オータムナルさま………」

 

 

 

 

 

 

 

 

好き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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好き、

 

 

 

と言う言葉は彼の唇によってかき消された。

 

 

唇を唇で塞がれ、俺の声は言葉になることなく喉を逆戻り。

 

 

不意打ちのキスに「ふっ……」俺の喉から漏れたのは甘い吐息だった。

 

 

唇の合間から舌が入り込んできた。

 

 

深い

 

 

深い――――

 

 

 

キス

 

 

 

オータムナルさまの舌は熱を持ったように熱い。あったかい唾液が流れ込んできて、オータムナルさまのキスに応えるようにそれを舌で絡めとる。

 

 

唇の合間からいやらしい水音が漏れ聞こえてきて、その音に俺の頬がカッと熱くなった。

 

 

オータムナルさまは俺の顎を持ち上げ、さらにはぎゅっと俺を抱きしめる。

 

 

俺も彼の背中に手を回した。

 

 

ああ、彼のぬくもりは―――なんて温かいのだろう。

 

 

俺を抱きしめる腕は力強いのに優しい。不思議な感触。

 

 

そして彼の香りは何て芳しい―――

 

 

五感全てで彼を感じ取って俺は彼の胸の中、ただただ貪られるままキスに応えた。

 

 

「んっ……ふ………」

 

 

オータムナルさまが俺をさらに強く引き寄せ、下半身と下半身が触れ合ったときビリッと俺の中で電流のようなものが走った。

 

 

オータムナルさまの中心はすでに硬くなっていて、物欲しげに俺の物へと押し付けてくる。

 

 

その感触に再び頬に熱が走った。

 

 

「オータムナルさま……」

 

 

 

 

 

 

「紅――――お前が欲しい。千夜なんて待てない。

 

 

 

私は今すぐお前を抱く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オータムナルさまは熱っぽい視線で俺を見下ろし、同じく熱い吐息を吐きながら俺の耳元でそっと低く囁いた。

 

 

「良いか?」

 

 

と聞かれて「はい」と即答できない俺――――

 

 

 

オータムナルさまを好きだって自覚はあるけれど、彼のペースにはまだ追いつけない。

 

 

何て答えていいのか分からずひたすらにまばたきを繰り返していると、それを肯定の意味だと受け取ったのか、

 

 

やがてオータムナルさまの手は俺のスーツパンツの中に入り込み、下着の上から双丘を撫でられる。その手つきはちっともいやらしさを感じず、むしろ優しく撫でまわす手のひらに愛情を感じた。

 

 

ぞくり

 

 

と首の後ろが粟立ち、その手が前に回った。俺の物を慎重な手つきでゆっくりと

 

 

撫でまわされて。

 

 

‟それ”がだんだんと硬くなっていくのが分かる。

 

 

「………オータム……ナ……」

 

 

切れ切れに彼の名前を呼び、彼の長めの襟足を掴むと

 

 

オータムナルさまは俺の頭を引き寄せ、首筋に噛みつくようなキスを落としてきた。

 

 

 

「オータムナルさ……待っ……」

 

 

 

彼の細くて長い指が俺の物に直に触れてきたところで

 

 

「待ってください!」

 

 

俺は彼を押し戻していた。

 

 

 

 

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オータムナルさまはちょっと切なそうに眉を寄せて俺を見下ろしてきた。

 

 

「待てない、と申したのだが」

 

 

「も……申し訳ございません。あの……こうゆうことはちゃんとした後の方が良いって言うか……」

 

 

「ちゃんと?」

 

 

オータムナルさまは目をぱちぱち。

 

 

 

 

 

 

「まだ言ってなかったんですけれど俺……俺は――――

 

 

あなたのことが」

 

 

 

 

 

「言葉なら要らぬ」

 

 

 

 

オータムナルさまは俺の言葉に被せて強く言い放った。

 

 

え――――………

 

 

「お前が私をどう思おうが、それは私にとってなんの関係もない。

 

 

だがしかし、お前が前の恋人に対するような気持ちを私に望むのなら

 

 

 

 

残念だが

 

 

 

同じものを返してやれない」

 

 

 

「それはどう言う―――……」

 

 

俺が目を開いてオータムナルさまを見上げると

 

 

 

「言葉通りだ。

 

 

 

私は愛が何たるかを知らない。私に群がるのは欲にまみれた薄汚い人間どもだ。誰も信用できない

 

 

 

氷よりも冷たいナイフよりも鋭利な言葉が俺の心に突き刺さった。

 

 

 

「そんな!俺はオータムナルさまに何か見返りを求めているわけじゃない!!俺はただ……!」

 

 

 

「私には分からぬのだ!」

 

 

 

俺の怒鳴り声にオータムナルさまも怒鳴り声を挙げた。

 

 

「お前が恋人だった女に抱く感情が―――私には分からぬ。理解できぬのだ。

 

 

お前の恋人だった女のように愛されたことがないから」

 

 

 

 

 

 

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「紅、しばらく勉強会は中止だ」

 

 

オータムナルさまの温度のない言葉を聞き、俺は目を開いた。

 

 

「それは―――!俺をクビにするってことですか?」

 

 

思わずオータムナルさまの両肩を掴んで彼を揺すると

 

 

「そうじゃない」

 

 

オータムナルさまは俺から目を逸らした。

 

 

「じゃぁどういう…!」

 

 

「お前と向き合いたいからだ!」

 

 

俺の質問を遮り、オータムナルさまは大きな声を挙げた。

 

 

ビクッ!

 

 

俺の肩が大きく揺れ、その肩を宥めるようにオータムナルさまは

 

 

「声を荒げてすまない。私はお前と向き合いたいから……本当の意味で愛がなんたるかを知りたいから…だからちゃんとお前のことを『愛してる』と言う気持ちができたのなら

 

 

私はお前を迎えに行きたい」

 

 

俺の目から涙が一粒こぼれた。

 

 

「泣くな。泣かないでおくれ」

 

 

その涙をそっと優しく拭うオータムナルさま。

 

 

彼の指先は―――こんなにも温かいのに……

 

 

心は―――冷え切っている。

 

 

 

 

 

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どこをどうやって歩いてきたのか分からない。

 

 

俺の部屋の前で秋矢さんを見つけた。

 

 

「ミスター来栖、皇子の具合は……」と聞かれて

 

 

「ミスター来栖……?」

 

 

怪訝そうに秋矢さんが首を捻ったとき

 

 

堪えきれず俺の目から涙が零れ落ちた。

 

 

変なの―――俺、ここに来て泣いてばかりだ。

 

 

前はこんなに涙腺弱くなかったのになぁ……

 

 

涙で滲む視界の中、秋矢さんが近づいてきた気配だけを感じ取る。

 

 

すん……

 

 

洟をすすって何とか秋矢さんを見上げる。

 

 

何でもないフリして、ちょっと目にゴミが入っちゃっただけなんですよ~って言おうとして

 

 

でも言葉が出るより先に涙の方が出てきた。

 

 

「……あ…これは……ちょっと……目に……ゴミ…」

 

 

用意した言葉は声にならなくて、小さな嗚咽混じりで何とか呟くのが精一杯。

 

 

みっともないなぁ。大先輩の秋矢さんの前で泣くなんて。

 

 

恥さらしもいいところだよ。

 

 

ぐい

 

 

目元を乱暴に拭い、「……すみませ…今日は…失礼します…」何とか断りを入れて、部屋に入ろうとした。

 

 

そのときだった。

 

 

ぐい

 

 

秋矢さんに手を掴まれて、俺はまたも壁に追いやられた。秋矢さんは戸に手を付き、俺を見下ろしてくる。

 

 

今、日本の女子たちの間では『壁ドン』なるものが流行ってるらしい。

 

 

日本の女子のみなさんに、秋矢さんを貸してあげたいぐらい彼に壁ドンされてる俺。

 

 

でもさっすがモテる男はニーズに応えるだけの力量があること、そしてそれをやっても全然嫌気がしないのも凄い。

 

 

……て、何女子の立場になって解析してるの俺。

 

 

俺は女じゃないし、こんなことでトキメかないし。

 

 

俺はハートブレイク中なんですぅ。だから今はそっとしておいてください。

 

 

と言う目で訴えかけると……(声を出すとしゃっくりが出るから出せない)

 

 

秋矢さんはおもむろに俺の目元に手を伸ばし、そっと涙の粒を指の腹で拭った。

 

 

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へ――――……?

 

 

「涙の痕……泣いていらしたのですか?」

 

 

秋矢さんは切なそうに眉を寄せて、俺をじっと見下ろしてくる。

 

 

「皇子に……泣かされたのですか?」

 

 

またも聞かれ、俺はブンブン首を横に振った。

 

 

確かにオータムナルさまから距離を置こうと言われて悲しかったけれど―――そんなことぐらいで泣いちゃう俺が大人げないって言うか…男らしくないって言うか…

 

 

何て答えるべきか色々考えていると

 

 

ふわり

 

 

秋矢さんの纏ったムスク系のフレグランスが上品に鼻の下をくぐり、それをゆっくり感じる間もなく秋矢さんの温もりに包まれる。

 

 

 

 

え――――………?

 

 

俺は秋矢さんに抱きしめられている状態なわけで―――

 

 

何が起こったのか分からなかった。

 

 

だって………

 

 

どうして―――

 

 

それとも深い意味なんてなくてまた冗談―――………

 

 

 

 

 

 

 

「私ならあなたを泣かせたりはしないのに。

 

 

 

大切に大切にして―――あなただけを生涯守り抜くのに」

 

 

 

 

 

 

 

耳元でそっと囁かれて、俺は目を開いた。

 

 

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これは―――

 

 

俺、慰められてるのかな……にしちゃ相変わらず謎だぜ。

 

 

「あ……あはは~……そうゆうことは女性に(他の男性でも可)に言ってあげてください」

 

 

何とか秋矢さんの腕の中から逃れようと身をよじるも、秋矢さんは真剣な目で俺を捉えて身体ごと離さない。

 

 

「秋矢さん……?」

 

 

俺が彼の名前を呼ぶと、秋矢さんは扉についていた手をドアノブに伸ばし、それを勢いよく押した。

 

 

当然、もう一方の手で扉をついていたわけだから扉は勢いよく内側に開き、その勢いで俺の体も後ろへぐらついた。

 

 

「ぅわ!」

 

 

みっともない声を挙げて後ろにひっくり返る。

 

 

その衝撃で涙も引っ込んだ。

 

 

尻餅をついて「いてて…」と打った場所を撫でさすっていると

 

 

パタン…

 

 

秋矢さんは静かに扉を閉め、

 

 

照明を落とした中、彼の姿だけが窓から侵入した月明かりの元、神秘的に煌々と浮き出ていた。

 

 

「何なんですか…!」

 

 

俺がしゃっくりの混じった声で何とか抗議しても、俺の抗議なんて痛くもかゆくもないんだろう、秋矢さんがうっすら微笑みながら俺の立てた膝へと手をつく。

 

 

 

 

 

「言ったでしょう?私はあなたが大好きだと。

 

 

あなたがいけないんですよ。無防備に泣き顔なんて見せるから―――

 

 

 

私は忠告したはずです。警戒心が薄い―――と」

 

 

 

 

秋矢さんは俺の膝をこじ開けると、俺の脚の間に跪き、俺の手をそっと取った。

 

 

そしてまるで王子様がお姫様にキスをするように―――大事そうに俺の手を包み、その甲にそっと口づけ。

 

 

 

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え――――………

 

 

目をまばたいて秋矢さんの行動を見守っていると、秋矢さんは俺の膝の間に跪いたまま、真剣なまなざしで俺を見下ろし

 

 

「冗談じゃありませんよ。

 

 

私は―――

 

 

 

あなたに嘘はついたことがない」

 

 

そう言って俺の脚をさらに開かせると

 

 

おもむろにまたぐらを掴まれた。

 

 

へ!!!?

 

 

びっくりしてバカみたいに金魚のように口をぱくぱくさせていると

 

 

「さっきの余韻ですか?どうやら皇子とは一線を越えていないようですね」

 

 

秋矢さんはさも満足そうに微笑み、俺は秋矢さんの手の中でだんだん硬くなっていくそれに、自分自身信じられない思いで、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

 

「……そ…そんな風に触られたら!男なら誰だってそうなる…………」

 

 

精一杯の言い訳で何とかその手から逃れようとするも、腿をがっちりとホールドされていて脚をばたつかせることもままならない。

 

 

下手に動くと、益々恥ずかしい恰好になって俺は羞恥で顔が赤くなっていくのが分かった。それと比例して秋矢さんの手の中で益々硬度をます”それ”

 

 

「っつ………やめっ……」

 

 

またも抗議すると、秋矢さんは俺のものをもみしだく手を休めて、俺のベルトのバックルに手を掛けた。

 

 

何をするのか大抵予想がついた―――

 

 

「秋矢さ……っ!!やめっ…」

 

 

必死の抗議も虚しく秋矢さんは強い力でバックルを取り外すと、片手で素早くスーツパンツのボタンを外し、さらにはジッパーを下まで一気に下げられる。

 

 

そっけない黒のボクサーが露わになり俺の顔から火が出そうになった。

 

 

「やめっ!!秋矢さん!!」

 

 

けれど俺の叫びも虚しく、秋矢さんの手が無遠慮に下着の中に侵入してきた。

 

 

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秋矢さんは俺の中心を包み込むと、上体を倒して俺に伸し掛かってくる。

 

 

こうなったら益々逃げられない。

 

 

秋矢さんは俺のものを手の中で弄んで、力を強めたり弱めたり、少し強めに縦にしごいたと思ったら指の先で俺の先端を優しくくすぐったり。

 

 

う……

 

 

上手い!!

 

 

って…

 

 

感心してる場合じゃないよーーー!!

 

 

秋矢さんの手は自分でやるよりも、ずっとずっと気持ち良くって思った以上の速さですぐに快感が昇り詰める。

 

 

最近ご無沙汰だったてのもあるけれど。

 

 

「あ……秋矢さ……」

 

 

口を開けて抗議するも、秋矢さんの手は緩まない。それどころか益々手の動きが早くなって

 

 

俺の首や腰がのけぞった。

 

 

「だ……だめ……これ以上は……!」

 

 

叫ぶように言って必死に秋矢さんを引きはがそうとするも、すでに快感で手や脚の先まで痺れをきたしている俺の力なんて赤子のそれと同然で。

 

 

秋矢さんはのけぞった俺の首にそっと口づけ。

 

 

「気持ちいいですか?ミスター来栖。

 

 

イってもいいですよ。私の手の中で―――」

 

 

秋矢さんのくすぐるような低音が耳朶を震えさせ、それが引き金になったのか硬度を増した俺のそれはもう爆発寸前。

 

 

限界だった。秋矢さんを押し戻し下着を直してズボンを履く時間を計算しても

 

 

間に合わない。

 

 

ビクッ!!腰が一層強く揺れた。

 

 

「い…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミスター来栖」

 

 

 

 

 

 

 

俺が秋矢さんの手の中で果てるのと同時だった。

 

 

彼はそのとき俺の唇に口づけを落とした。

 

 

 

 

 

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口づけは長いものだった。

 

 

俺が秋矢さんの手の中で果て切るまで、じっくりと味わうように。

 

 

舌が入り込んできても、俺はその舌を追い出すことができなかった。

 

 

ただ呆然と――――されるがまま。

 

 

果てる瞬間―――

 

 

目の裏が白くスパークしていく中、俺の脳には何故か秋矢さんが以前弾いていたピアノの曲が流れていた。

 

 

それは名もなき曲―――

 

 

でたらめだ、と言ったがその歌詞にはちゃんと意味があって―――

 

 

俺には

 

 

 

「狂おしいほど

 

 

 

愛している」

 

 

 

 

と聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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